Twins War
ある日曜日。
学校は休みで部活もなく、両親共に出かけていたので一人リビングでのんびりとテレビを見ていた。
すると朝から出かけていた俺の双子の弟の琉が昼頃になって帰ってきた。
見ず知らずの男を引き連れて・・・。
紹介したいからと言われその男を見たとき、琉は信じられないような発言をした。
「新、これ俺の恋人の竹内卓。同い年なんだ。」
相手は明らかに男だった。
そして琉も間違いなく男だ。
竜の恋人だと言う相手が男と言うことに驚いて何も言えないでいると紹介された男はよろしくと言った。
「え・・・恋人?男同士だろ?」
「そうだよ。でも恋に性別は関係ない。新ならわかってくれるよね。」
流は真剣な顔をしてそう言った。
その迫力に俺はうんと頷くことしかできなかった。
そして二人は琉の部屋へと階段を上っていった。
脱力した俺はソファに深く沈み込んだ。
まさか弟に男の恋人ができるとは思わなかった。
俺達は双子なだけあって顔の作りが似ている。
しかし琉の方が俺より大分綺麗な顔をしている。
そのためか俺より女の子からモテていたのを覚えている。
勉強、スポーツ共に平凡な俺に比べ流はよくできた。
今では頭の出来が違うため辛うじて公立の高校に入った俺と違い、余裕で国立の高校に受かった。
そのため違う学校に通っている。
琉がどんな友達と付き合いどんな恋人がいるのか知らなかったがまさか男の恋人ができているとは思いもしなかった。
琉のことだから可愛い彼女でもいるのだろうなと思っていたのだが・・・。
ビックリしたが、琉が選んだことだから俺はとやかく言うつもりはない。
しかしいつも一緒にいたから少し寂しい気もした。
でも数時間でも俺はお兄ちゃんだから応援してやろうと思った。
二人が上がっていった二階が気になったが恋人の時間を邪魔しちゃダメだろうと再びテレビに意識をやったのだった。
琉が男の恋人を連れてきた日から数日経ったある日の土曜日。
「新!!」
自分の部屋で寛いでいたとき、琉がいきなり部屋の中に入ってきた。
「お前、ノックしてから入ってこいよ。・・・で、どうした?」
読んでいた本から目を離し、琉の顔を見遣る。
すると琉の目に涙が溜まっているのに気がついた。
「お前、どうしたんだ!?」
ベッドから起き上がると琉に近づいた。
「俺、卓に振られちゃった・・・。別れようって言われたんだ!」
そう言って俺の胸に飛び込んできた。
俺は仕方なく琉の頭を優しく撫でてやる。
琉は激しく泣きじゃくる。
「とにかく落ち着け・・・な?」
優しく言うとベッドに座るように誘導し、落ち着くように何回も頭を撫でてやった。
暫くすると琉から嗚咽が聞こえなくなった。
「落ち着いた?」
「うん・・・。」
そして俺は琉が興奮しないように順を追って説明するように促した。
「いつものように話してたら、いきなり別れようって言い出したんだ・・・。他に好きな人ができたからって。」
「そっか・・・。」
なんと言って良いかわからず言葉に詰まった。
あまり恋らしい恋をしたことがないので返す言葉がみつからない。
「ねぇ新・・・。」
気の利いた言葉を探していると琉の方から話しかけてきたので顔を向けると突然キスをされた。
それは掠め取るような一瞬の出来事だった。
「抱かせて。」
頭の中に琉のその一言が鮮明に響いた。
その言葉が理解できず反芻しているとそのままベッドに押し倒された。
「俺を慰めて・・・。」
琉のどこか切なそうな顔に流されたのかもしれない。
俺はたいした抵抗もせずに抱かれてしまったのだった・・・。
目を覚ますと見慣れた部屋の風景があった。
いつの間に寝てしまったのだろうと目を擦って起き上がる。
するとあらぬところからひどい痛みを感じて琉としてしまったことを思い出した。
琉にされたことを思い出して顔が熱くなるのを感じた。
しかしそれとほぼ同時に実の弟としてしまったという事実に血の気が引いた。
「俺はなんてことをしてしまったんだろう!慰めるためだと言ってもこんなことしたなんて・・・。」
思わず顔を押さえたがふと琉がいないことに気づきベッドから抜け出した。
琉もあの時はおかしかったんだ。
後悔してるんじゃないだろうか?
思い悩んで自殺・・・なんてことを考えていたらどうしようと悪い方に考えてしまう。
部屋の扉を開け階段の方へ向かおうとしたとき下の階から琉の声が聞こえてきた。
誰かと電話をしているようで笑い声が聞こえる。
一先ず悪い考えが当たっていなかったことに安心する。
まだ両親が帰ってきていないのか大声で話している。
「ホントお前のおかげだよ。ありがとう卓。」
電話の相手はどうやら別れたはずの卓らしい。
でも振った相手と平気で話ができるのだろうか?
さっきまではひどく泣きじゃくり俺を抱くということをするくらいおかしくなっていたのに。
しかもお礼の言葉を述べている。
「まさか、ああもあっさり新を抱けるとは思ってもみなかった。お前が付き合ってるふりをしてくれたおかげだよ。」
俺が聞いてるということも知らずにベラベラと喋っている。
その話を聞いて俺はやっと琉に騙されていたことに気づいた。
「・・・琉・・・。」
怒りがふつふつと沸いてくる。
階段を下りて怒鳴ってやった。
「俺を騙してやがったな!!」
俺がいることに気がついた琉は急いで電話を切ると慌てて言い訳を始めた。
言い訳なんか聞きたくなかった俺は琉を睨みつけると踵を返して自分の部屋に戻った。
「新!!」
「俺に二度と話しかけるな。」
そう言い残すとドアを琉の鼻先で閉めて鍵を掛けた。
「ごめん新!!お願いだから出てきて!」
琉は俺の部屋のドアをドンドンと激しく叩き謝罪の言葉を繰り返した。
俺はベッドの上に座ると琉の声がするドアを見た。
俺のためだけにあんな演技をしたのだろうか?
わざわざ友達を使って恋人のふりしてもらって・・・。
あの涙もまるで本物のようだった。
それほど俺のことが好き・・・なのだろうか?
普通なら嫌がったりするものなのだろうが俺は笑いがこみ上げてきた。
全ては俺のために・・・だよな?
馬鹿らしくて、でも可愛くて・・・。
琉に聞こえないように声を抑えて笑うと後一時間したら許してやろうと思った。
どうやら俺は琉に甘いらしい。
それが恋人に対する愛か、家族に対する愛のせいかはわからないが・・・。
---END---
双子モノです!大好きです!
この作品は今現在書き溜めている双子モノの小説の二作目で、一作目はこれより長いので時間があるときにアップしようと思います☆
あまり双子と言う条件を活かせてませんね(汗)
いいんです。未熟なのはわかってます。(一生未熟者のままな気がする・・・)
ここまで読んでくださってありがとうございました☆
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06'5/16